サムネイルの写真は空飛ぶ円盤ではなく、「ハンドパン」。

楽器としての完成は2000年頃であり、この楽器はスティール・パンを原形とした応用バージョンと言えるだろう。
※楽器の生い立ちその他はWikipediaを参照頂きたい。
私は1997年初夏に最初の渡米しており、そこでこの楽器を演奏するストリート・ミュージシャンとカリフォルニアで出会い、音色に惹かれた。この段階では未だ「ハンドパン」が楽器として確立しておらず、私が出会ったストリート・ミュージシャンも「あくまで新型スティール・パンのサンプルだよ。」と言いながら、この楽器を演奏していたが、単旋律しか演奏出来ないこの楽器の構造上が理由とは言い難い程メロディーが断片的であり、どこか子供が鉄筋を叩いて遊んでいるようにしか聴こえないような短調でランダムな旋律が延々続いたのを覚えている。
演奏方法は手のひらで叩く手弾きの他、マレットで叩いて音を出す方法等があるようだ。如何せん楽器の原型としては完成しているが、未だこの楽器を「音楽」「楽曲として演奏する」には至らず、発展途上中と言えるだろう。
最近では主にヒーリング目的で使用する人たちが増えており、都内各所では実際にワークショップ等が盛んに行われているようだ。
1997年の渡米から帰国し、その後何度かカリフォリニアと東京を往復しながら全く別の目的で私は渡米していたので、段々とこの楽器のあれこれから心が離れて行った。
そんな折り、再びハンドパンと再会したのはおそらく2011年の冬頃だった。丁度私がそれまで続けて来た「シャンソンの歌手の伴奏者 & 編曲者」を完全撤退し今の Didier Merah の活動に専念し始めた頃で、再婚してから生まれて初めてパソコンを相方に与えられ、際限なくYouTubeを聴ける環境が整った時期と符合する。
音楽探索の血が再燃し、世界中の音楽をとことん聴き漁って行く過程でハンドパンと再会した切っ掛けは、確かこの楽器の原型とも言われる『スティールパン』の楽曲だったかもしれない。

「ハンドパン」と「スティールパン」は凹凸の構造が真逆であり、スティールパンは真ん中に向かって窪んで行くのに対し、ハンドパンは真ん中に向かって形が膨らんでいる。
だが音質はとてもよく似ている。
さて話をハンドパンに戻して‥。
音楽的には発展途上の楽器「ハンドパン」をそれなりに昇華させて来た、ハンドパンのユニットも存在する。その一つが『Hang Massive』と言うユニットだ。
メンバーは [Danny Cudd] と [Markus Offbeat] の男性二人で構成される。ジャンルとしては「ワールドミュージックからアンビエントミュージック」と表記されているが、そのように説明されないとジャンルの特定が難しい微妙な立ち位置のまま彼等の活動は現在に至る。
上の動画は2018年頃に収録されたものだが、やはりどこか楽器の偶発性に依存して演奏している感じが拭えない。
二人で演奏していても、最高4音以上の音色が叩き出せないのがこの楽器の難点と言えるだろう。
『Hang Massive』ではないが、私が好きなハングドラムの演奏動画の一つが此方だ。⇩
[Kabeção] はポルトガル出身のマルチ楽器奏者、作曲家、サウンドヒーラーであり、旅行家でもある。ハンドパン一個で多くの国を演奏旅行しながら動画を作成し、それはYouTubeの彼のチャンネルでも楽しむことが出来る。

彼のハンドパンもかなり即興性に富んでおり、殆どの楽曲が確固たるメロディーやハーモニー等を持たない。残響やその時々のマインド・コンディションに左右され、演奏や表現スタイルが大きく変化する辺りはこの楽器奏者の特徴であり、マイナス要素であると言えよう。
ただ、このシリーズ「Bell Cave Session」はとても貴重な録音であり、私も好きで時々聴いている。
最近になってハンドパンを伴奏 & SE楽器として利用しながら、Topにヴォーカルを乗せて一個のヴォーカル音楽としてオリジナル曲を発信しているハンドパン奏者が現れた。
それが Marco Selvaggio である。
Marco Selvaggio はイタリアはシチリア島、カターニア出身のハンドパン奏者である。ハングドラムの他にジェンベ、バスドラム等も演奏し、アフリカ音楽に深く精通している。
だが彼も段々と活動のクオリティーが落ちて来ており、最近はアメリカンポップスに迎合したような楽曲が数曲リリースされている以外、目立った活動は見られない。
‥とまぁこのように、音色の美しいハンドパンはやはり打楽器であり、打楽器と言う楽器の特性上どんなにもがいても人間が一度に出せる音の数の上限を考えた場合、音楽或いは楽曲としての完成度はピアノに比べると今一つと言えるだろう。
ならばフルオーケストラのゲスト・プレイヤーとして演奏出来る程の、優れた楽曲の出現をあとは待つのみである。
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