タイ・ポップスの超新星 – Millie Snow

タイ・ポップスの若きミューズ、Millie Snow(通称: ミンリー)が満を持して、เดี๋ยวคุย (Talk Later) でソロデビューを果たした。

Song Writers: Janpat Montrelerdrasme / Jirapat Chanjang

 


Millieのこれまでの主な活動は此方。⇩

愛称: ミンリー(現在 21歳)の職業はジャズ・キーボード奏者、ジャズダンサー、作詞作曲も手掛ける。タイの人気TV番組『I Can See Your Voice』で超絶的な美声を放つ。

2017年末から2018年前半にかけて人気爆発したタイの国民的大人気アイドルグループ、BNK48の第二期生オーディションで、一万人超の応募者の中からファイナリストの94名に進み、デジタルライブスタジオ(水槽)でのパフォーマンスで審査に臨んだが、残念ながらその後のステップには進んでいない。

 
彼女はピアノやクラシックバレエを学ぶ、どちらかと言うとアカデミック色の強い歌手 兼 ダンサーであり、作曲や楽器演奏も行う。(その様子はミンリーの [Instagram] でも存分に紹介されているので、興味のある人は是非。)
 


ミンリーは広音域の声と多種類の声色を持つ歌手としてタイ・ポップス界でも若い頃から頭角を現し、最近では竹内まりやのPlastic Loveのカバー動画で世界の注目を一手に集めた。
 


上の動画の彼女の歌唱表現は既に原作(原曲)のクオリティーを優に超えており、その感動冷めやらぬ実況ブログを私も短文評論でしたためた程だった (on note)。
 
んなタイ・ポップスの超新星 Millie Snow がこのコロナ禍の隙間をぬってじわじわと準備を進め、遂にソロ・デビューを果たしたと言うニュースをFacebook越しに知った時は何やら自分のことのように嬉しく、意気揚々と彼女のYouTubeをクリックした。
‥‥が。。

ここからはデビューあるあるの話しに一気にネタが移動する。
 


カバー曲が良いのにソロ曲が今一つと言えば、日本では miwa徳永英明等がそのカテゴリーに入るだろう。

miwa は職業を「シンガー・ソングライター」と明記しているようだが、残念ながら肝心のオリジナル曲が良くない。同時にオリジナル曲を歌う時の表現がカバー時のそれを下回り、未だ草彅剛さんが司会を務めていた頃の「僕等の音楽」や「FNS歌謡祭」等では彼女のオリジナル曲よりも、カバー曲のデュエットで出演することの方が多かったように記憶している。

又、徳永英明 も同様に、カバー曲だけを厳選して歌い継いだ時期があり、中でも「Wの悲劇」の乾き切った不愛想な歌唱表現はむしろ良い意味でリスナーの期待を裏切った。
 

 
編曲も素晴らしい。ある種の徳永のヴォーカルのもともとの声が持つ濡れ感を完全に消し去った「乾いたストリングス」が、楽曲の背景の隙間をしっかりと押さえ込み、けっして過剰な表現にならないよう支えて行く。
エンディングの最後にトニックに回帰せず、サブコードのような別Keyにシフトしてギターのスパニッシュテイスト的な、緩やかなアルペジオで終結させる辺り、なかなか魅せてくれるではないか。
 

話しを Millie Snow に戻すと、上にも書いた miwa のタイ・ポップス版のように見えて来る‥ と言う話しがしたかったわけだが、それよりもミンリーの場合ソロ・デビュー曲เดี๋ยวคุย (Talk Later) で余りにもメジャーウケを狙い過ぎた感が強く、表情も表現もジャンキーさ満載で兎に角汚さが目立つ。
老舗の洋食屋のビーフシチューの仕上げに化学調味料をガンガン振りかけた時のような違和感が動画全体を覆い尽くしており、兎に角後味が良くない。
 

 
顔をクシャクシャにして様になる人とならない人との境界線は、おそらく育ちにあると私は解釈する。
宮家の愛子さまがジーンズよりもローブデコルテのような、上品ないで立ちが似合うように、ミンリーにも同じことが言える。彼女がグランドピアノの前にセミフォーマルのドレスを着て着席した時の色香は、そもそもミンリーが持って生まれた天性のものであり、それはけっして誰かが作って取って付けたものではない。⇩
 


そのドレッシーかつ上品なテイストをもっと大切にしたところのプロモーションをすべきところが、「売る」為「ウケる」為のとてつもなく下品なプロモーションになってしまったことは、ファンとしてただただ残念で仕方がない。
 

 
⇧ この動画は中国のカウンターテナー歌手 周深(ジョウシェン)のBig Fishの弾き語りのカバーだが、此方も素晴らしい歌声と解釈を余すところなく、ミンリー個人の表現解釈を添えて大胆に披露している。
特に後半のベルカントすれすれのミンリーの裏声は、ただただ聴き惚れる。

デビュー目前でこれだけクオリティーの高いカバーを連発された後にはさぞ、華々しいソロ・デビューを放ってくれるに違いない‥ と、際限なく期待値も高まると言うものだ。だが蓋を開けてみると、何とも俗世間擦れした稚拙なプロモーションによって、一人の若い歌手がめっちゃくちゃにジャンキーな状態で世に送り出される形となった。

音楽も料理も、作り込み過ぎるとろくなことにはならない。究極、素材と塩だけで煮込むことが無難かつ最高の料理に仕上がるコツだ。

このルールを無作為に逸脱すると、Millie Snowことミンリーのデビュー曲เดี๋ยวคุย (Talk Later) のような悲惨な状況になると言う、確たる見本を公式に見せ付けられたようで、兎に角気が滅入るばかりである。
Talk Later‥ と言うタイトル通り、「ちょ、後で来いや」と言いたくなる程、楽曲も動画やプロモーションの内容共々問題山積としか言いようがない。
 

 
折角の超新星の名が聞いて呆れる程の、これは最悪の出来栄えだと言っても過言ではないだろう。

 
さて、この記事の最後に何を出そうかと迷ったが、数年前の過去ログ動画の中にミンリー作詞・作曲の作品があり、それが気に入っているのでこの記事の〆に貼っておきたい。
まだまだ粗削りではあるが、その粗削り感が天然の真珠のように初々しくて、私は作り過ぎたデビュー作よりも此方の方が断然気に行っている。
何でも素の良さをいかに引き出して行けるか‥、そこは出会ったプロデューサーの腕力が試される。
 


ふと、デビューアルバムが最も冴えていた 飯島真理 の、アルバム「Rose」の冒頭の作品Blueberry Jam(作詞・作曲: 飯島真理 / 編曲: 坂本龍一)と記憶が重なり、とても切なくなったのは私だけではないのかもしれない。
 

 

เหงาพอแล้ว [Enough] – Millie Snow
Lyrics : Millie Snow
Music : Millie Snow

 

(本記事はnoteより移動した記事となります。)

音楽紹介: [MAD] Plastic Love – Mariya Takeuchi (Cover) | Millie Snow

この作品『Plastic Love』(作詞・作曲: 竹内まりや – 1984年4月25日 リリース)がこの数年、再度ブレイクしている。世界中の多くの歌手(プロ・アマ問わず)等がこぞってカバーしており、中でもMillie Snowと言うタイの歌手(ピアニスト 兼 ダンサー)が歌うこのテイクが際立って光っている。

何が光っているかって、元来ライブとかカバーソング等が好きではない私がドハマりする程の編曲・再演のクオリティーの高さ、その一言だ。

 

Madpuppet Studioはどうやらタイ国内の、音楽制作スタジオだと書いてある(Facebook Pageより)。サポートを努めるミュージシャンはこのスタジオから配信されるYouTube動画の大半の演奏を担っている。と言うことは、日本式で言うところの「小屋付きのミュージシャン」と言うことになるが、これが凄い。

 

動画の演奏者を(歌手を含め)、以下に記載しておく‥。

Performed by
 Vocal – Sirichada Ruamrudeekul
 Keyboard:
Janpat Montrelerdrasme
 Drums:
Nantanat Thanupongcharat
 Bass: Oangkit Tangcharoen
 Guitar: Aphiwich​ Deepairojsakul​

 
動画全編をご覧頂ければ一目瞭然だが、特に間奏のKeyboardとGuitarの掛け合いがメッキメキに冴えているのがお分かり頂けるだろう。
日本国内のミュージシャンに、ここまでキレた、冴え渡ったアドリブを乱射して来るミュージシャンはおそらく皆無だろう。しかもお二人とも遠近感を狂わせるような大きなボディーを持っているが、それはこのお洒落で地盤の安定したアドリブを常に解き放つ為にあると聴き手を説得して来る辺りのパワー(圧)が素晴らしい。

ドラムを担当している Nantanat Thanupongcharat 、Instagramのプロフィール欄に「1994」と記載されているところを見ると、おそらく1994年生まれの現在27歳の若きミュージシャンだと思われるが、要所要所のライブ・パフォーマンスに於けるブリッジの入れ方・抜き方が既にベテランの域に到達しているようにも視えて来るから不思議だ。

 

 

さて、肝心のヴォーカルのMillie Snowは幾つかの名前を持ちながら活動しており、この記事で紹介しているYouTubeには「Sirichada Ruamrudeekul」と記載されているが、公的な芸名はおそらく「Millie Snow」で合っているだろう。

 

 

Instagramの中ではクラシックバレーの基礎をきちんと踏んだ、彼女の美しいダンス動画にもお目にかかることが出来る。
 

 
実は私は「唐田えりか」さんのファンなのだが(笑)、 Millie Snow ‥ どこかえりかさんに似ているように見えてひと目でファンになってしまった私って、ただのミーハーなんだろうか ^ ^;

いえ、それだけではなくしっかりとした発声に表現のセンスも素晴らしい。天は時に一人の人間に対して二物も三物も与えてしまうのだから、本当に人間とは不公平な生き物だと思う。

 

肝心な動画の紹介が最後になってしまったが、ここまでの解説を読んでから動画『[MAD] Plastic Love – Mariya Takeuchi (Cover) | Millie Snow』を観ると又、違った味わい方が出来ることを期待して、この記事を〆たいと思う。