年齢不詳, 世界最高峰の女性DJ/ Hiroko Yamamura

音楽に真面目も糞もないとは思うけど、私の中では両者をきっちり線引きしている。と言うのも私自身が音楽家 (芸術家, 作曲家) であり、アカデミックな音楽教育を受けているからに他ならない。
色々巷では言われているが私は歴とした桐朋音楽大学 (ピアノ科) の卒業生である。
大学卒業後には同大学の研究科で作曲家に転科して進学し、小さな作曲コンクールでの受賞歴もある身だ。だがあいにく私はコンクールとは縁が薄く、そもそもコンクールの審査員と私の音楽歴や知識等が完全に逆転している状況下ではコンクールへのエントリーも余り功を為さない。

多くの音大教授等は私をレッスンすることを嫌がった(笑)。私が聴音の受講生として授業に参加しようものなら、教師の側が課題の演奏を間違い呆ける為全く授業にならなかった。
結果当時短期的に発足した特別クラス (通称: 特Aクラス) の教授Nは授業を完全に放棄し、私の年間授業出席日数と単位の確保の為に最初の数回の授業の他は全てお茶会を開催することになり、近くの喫茶店でしんしんと紅茶を飲むだけの静かな講義に変更と相成った。

さて余談はこの辺りにて終了し、この記事の本題に進まねば(笑)。

最近私が注目している世界最高峰のDJ Hiroko Yamamuraと言う女性には、どこか自分と近しい匂いを感じてならない。基本的には静粛な音楽以外は完全拒否の私だが、この人だけはどこか例外だと思っている。
基本賑やかしの音楽に大勢の聴衆を集めて開催される音楽祭やロック・フェスティバル等については、私が日ごろ繋がっている自然神等の意向も踏まえネガティブな価値観を私は持っているが、例えばこのブログで取り上げたような形態の密室空間を使って電波にイベントを放つスタイルであれば何の問題もないだろうと私は思う。
 


(⇧ 画像をタップしたら、YouTubeに飛べます。)

Hirokoが他のDJと異なる点を一つ挙げるとしたら、それはいわゆる「人気者の頂点でありたい」等と言う過度な承認欲求が殆ど見られない辺りだろう。
勿論大勢の観客が居る屋外イベント等では時折「もっと盛り上げてよ!」と言うような仕草によるHirokoのアクションも見られるが、基本的には彼女は卓を回している時の自分自身を最も愛しており、ブースの中の自分に超満足しているように見て取れる。

私がHiroko Yamamuraを他のジャンキーなDJとは一線を画して見ている理由はまさにそこ (上記に綴った要素) であり、やはり彼女の内面を覆い尽くしている音楽愛がHirokoを世界の頂点へと押し上げている原動力であることは間違いなさそうだ。
 


2024年7月に開催されたフジロック・フェスティバルには、急遽前日キャンセルとなったREMI WOLFの枠をHiroko Yamamuraがしっかり埋めたとのこと。
此方の動画を探してみたが高音質 & 高画質の動画は見つからなかった。そもそも屋外で多くの観衆を入場させた状態の音楽は既に私にとってもはや音楽ではないので、この記事で紹介するまでもないだろう。
渡りに船だ🚢

世界中の音楽を知る筈の私もHiroko Yamamuraの扱うジャンクフードのような音楽のジャンルにはなかなか疎いのだが、彼女は単純にテクノとかエレクトリック何とか‥ と言う感性の枠を既に突き抜けているように感じ取れる。
一説にはアッパーテクノ、ハイパーテクノ等とも言われる音楽をビー玉転がしのように手の中で転がして行く彼女のトラックは私にとっては「テクノイズ」とでも言うべき、段々と脳内で音楽がホワイトノイズ化して行くから面白いし、たまらない。

特にルーム後半に向かって選曲のボルテージが一気に過熱 (加速) して行く辺り、スポーツに喩えるならばどこか絶頂期のカール・ルイスの走りにも似ている。
 


ところで‥。この記事の中盤でも触れた2024年7月に開催されたフジロック・フェスティバルでの彼女の、音質の良くない動画は確かにYouTube上に存在するので、今この記事を書きながら実はひっそりそちらを聴いている。

🔗 Hiroko Yamamura @ 2024-07-26 FUJI ROCK FESTIVAL ’24 (WHITE STAGE)
 
彼女の選曲は本当に面白い。該当動画の39:11~になんと宇多田ヒカルの作品が現れる。あまりにさり気なく割り込ませて来るので、日本人の私でさえもそれに気付くのが遅れた(笑)。
Hirokoの音楽の挿入の仕方や紹介のスキル等、なかなか冴えており切れ味が良いではないか💕 エフェクトのチェンジング等も含め、なかなか興味深い。
 


このブログ記事の最後にどのHiroko Yamamuraを紹介しようか迷ったが、此方の動画を貼っておく。これは最近気に入って時々聴いている、やはり屋内でひっそり卓を回すHiroko Yamamuraの様子だ。
大爆音で空気中に騒音をまき散らすことがないので、このスタイルであれば自然神等の怒りを買うことはなさそうだ。環境破壊も引き起こさずに済むので、これなら堂々と私のブログでも紹介出来る(笑) 🎛️

さぁ! 楽しい音楽の時間だ。
 

 

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アルバム “ENIGMATIC SOCIETY” を聴きながら

不意にアルバムENIGMATIC SOCIETYを聴いている。丁度Robert Glasperのニューアルバムを探している最中に、このアルバムの沼にハマったような形に‥。

そう言えば昔吉祥寺に足げく通ったタイ料理店で、いつ行ってもエキセントリックな音楽が掛かっていたことを思い出した。
どこかアバンギャルドR & Bとでも言うような店長独自の選曲で、カセットに収められたプテイリストのようなセレクトが好きだった。

このアルバム『ENIGMATIC SOCIETY』が丁度それに似ていて、眩くアジアンテイストな記憶が蘇る。

 
元々ブラックコンテンポラリーは言語上の理由で(私が大の英語嫌いだったこと)敬遠していたが、1997年に野暮用でL.A.に遠征に行った時から急激に好きになった。
 
当時下宿先でお世話になった同居人が大のブラックコンテンポラリー好きのイギリス人で、彼の車にガチャガチャと積んであるカセットテープの大半がいわゆるブラコンだったのだ。
そのラインナップに触れている内に気付くと私は、ブラックコンテンポラリーの洗礼を受けてしまっていた‥。
 


少し話が脱線するが、昭和の後期辺りから『ジャングルビート』と言う、密林系のリズム体が大流行した。日本国内でもダンスルーム等に行けばレゲェとセットで、このジャングルビート・テクノがよく掛かっていた。
 
国内で流行ったジャングルビート系の一つに、小室哲哉とダウンタウンの浜田雅功が組んで1995年頃にリリースした『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~』が大ヒット & ロングヒットを飛ばしていた。
 


リズム的にはこの曲『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~』はハイブリッドになっており、レゲェ+ジャングルビートの複合体でリズム体が完成していると言った方が良いだろう。
 
『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~』がロングヒットを飛ばしていた1990年中期から後期頃の頃の私は、ジャングルビートよりもサルサやメレンゲ、タンゴなんかにどハマりしており、今何が流行っているのか‥なんてことは余り考えずに、渋谷はHMV辺りにほぼ丸一日しけ込んで端から端までそのシーズンの新譜を聴き漁っていた。

余りアーティストの個人名等に囚われることなく兎に角色んな世界の音楽を片っ端から聴いていた頃なので、いつ、誰が何をリリースしたか‥ と言われると即答出来ないが。
 
最近になってRobert Glasperの音楽に再会したのはYouTubeの悪戯のお陰とも言えるが、その中でもこの曲Let It Ride (Lyric Video) ft. Norah Jonesには珍しく惚れ込んで何度も何度も聴いている。
 


YouTubeでRobert Glasperを聴いていると、何故か決まってE Preciso Perdoar』 – Ryuichi Sakamoto / Cesária Évora / Caetano Veloso がサイドバーに出現する。
恐らく上に触れたRobert Glasperの作品とリリース時期がかなり近いので、アルゴリズムが反応するのかもしれない。
 
両方の楽曲を聴き比べると確かに何かしら、時代の匂いを強く感じてならない。
時代が持つ香りとでも言うのか、無駄にカラフルなネオンサインが両楽曲の背後から立ち上って来るから不思議だ。
 


1990年代中期から後期は確かに、私の前職も盛り上がっていた頃だ。昼夜を問わずに仕事に追われ、断っても断っても後から後から仕事が湧いて出て来るような、良くも悪くもそんな時代だった。
ミュージシャンが猫も杓子も横柄な態度で居ても仕事を失うこともなく、多くの演奏家や編曲家たちが懐を潤わせた好景気の最後の一瞬だったようにも思う。
 
 
あの頃通い潰したあのタイ料理店は今も経営スタイルを変えて吉祥寺のほぼ同じ場所に存在するようだが、かれこれ2005年頃を最後に足を運んで居ない。
当時は働いても働いても貧乏だった私も時を経て経済状況が一変し、それにともない体力的かつ健康状態も激変した。以前よりも食が細くなった分、良質で内容の良い食事を少量摂る食生活にシフトした。
 
変わらないのは音楽の聴き方、音楽への貪欲さだけかもしれない。それだけはきっと終生変わることが無いだろう。とは言えかつて音楽を大音量で長時間聴き過ぎたことが原因で二度難聴を発症していることもあり、最近は2時間以上音楽を聴く時は間に休憩を挟んだり、ヘッドホンの音量をうんと控え目にして聴く等、自身のケアを何より優先している。
 
2023年の夏至を過ぎ、今日から再び昼夜のバランスが変わって行く。
過ぎ行く時を惜しむのは老化のせいではない。このご時世、色々な理由で多くの知人が体調不良を訴えており、いつ何が起きるか分からなくなって来た。
今日会える人には今日会っておかないと、次いつか必ず会えるとは限らない。
 
この数年活動を全く止めてしまったミュージシャンも複数居るが、彼等が今どうしているのかについても殆ど分からないことが増えて来た。
それまで更新頻度が多かったFacebookやTwitter等の発信が、2020年の秋を最後に止まったまま‥ と言う音楽家も多数居る。
懐かしさとかなしみと後悔、その隙間をぬうように音楽を聴くことが増えた。
 
今日は少し悲しく、ロンリーな気分だ。
誰かを失った訳ではない、‥今のところは。そんな感じの、良くない胸騒ぎが続いている。
そんな今の気分に相応しいアルバムを、今夜はしんしんと聴いている。