[音楽評論エッセイ] Night Tempoを分析する – K-Pop plus New渋谷系

最近CDショップが軒並み閉店続きで、先日新しくデジタル楽器を購入しようと都内某所の山野楽器の閉店時間を調べようとしたら、該当のショップが既に閉店していることを知って唖然とした。
記憶が合っていれば既に10年程前から、都内のCDショップの多くが縮小を繰り返しており、銀座の山野楽器本店もほぼ楽器売り場しか残っていない状況だ。
 
AKB48が握手券込みで複数パターンのCDを乱売し始めた頃から、日本の音楽シーンは目に見えて混乱期に突入し始めた。丁度その頃海外発祥の音楽サブスクリプション “Spotify” が海外ではじわじわと着火し始め、日本は一歩二歩出遅れてSpotifyが解禁となった。
 
Spotify初期に日本国内でSpotifyに堂々音楽配信を開始したのが、坂本龍一(故)と今メキメキと新しい音楽シーンを開拓中のDidier Merahの二人だけだった。
他の多くの邦人ミュージシャン等は「権利」と「利益」を重要視し、その結果さめざめと物理CD販売に執着し続けた。だがその一方で市場は粛々と縮小傾向を加速させ、今では実店舗自体右肩上がりの閉鎖閉店の嵐だ。
 

 
最近「アナログ盤」‥ つまり昭和で言うところの「レコード」盤の旧作再販が復活の兆しを見せていると言う話を方々から伝え聞くが、おそらくそれはCDショップの実店舗の閉鎖閉店の嵐の副反応のような現象だと私は感じている。
 
わざわざ元の音源に汚しを加えた音楽を、さらに「アナログプレイヤー」と言うしち面倒臭い機材で針を落とすと言う手間暇をかけて、今の若けぇもんの誰が聴きたがるだろうか。
殆どのリスナーが、良い音質で音楽を聴きたいに決まってる。なのでアナログ盤の旧作再販の小さな嵐は言ってみれば、ちょっとした小さなつむじ風程度のブームで終わるだろう。
 

そんな折り、やはりお隣韓国のNight Tempoがアルバム『Neo Standard』を引っ提げ、CD、アナログ盤、勿論サブスクリプションからの配信を含む色々な媒体から配信を開始したようだ。
  

 
嗚呼‥ この人又韓国ネタで攻めて来たかと溜め息をついているそこのアナタ!
それ程隣国は強敵なんだと認識して頂きたい。
日本の音楽も音楽シーンも、間もなく沈没します。私は日本人の血を引きつつ同時に外国の血も入り混じる「過去世 巫女」であり予言者なので、殆どの出来事は私の思うように流れて行くのです。
 

Night Tempoの新譜『Neo Standard』で特徴的なことがあるとすれば、以下の二点。
 

・ヴォーカルに日本の歌謡曲世代の中年以降の歌手をセレクトしていること。
・殆どの楽曲がNight Tempoのオリジナルであり、尚且つその曲調(曲風)が日本は昭和のシティー・ポップの流れを踏んだ二次創作であること。

 
これをやられたら多分、多くのその当時の音楽を愛して来たリスナー層は涙腺を徹底的に攻撃されるだけで、為すすべもないだろう。
勿論私も、このアルバム全編を通じて大好きだ(笑)。
一つビックリしたのは数ある昭和の歌謡曲の女性歌手陣の中に「鈴木杏樹」が混じっていたことだろう。本当にこの人、Night Tempoと言う男は色々よく調査していると感心する。
 
日本人は殆ど知らないと思うが、鈴木杏樹は「Kakko」と言う名前で全米をブイブイ言わせていた時期があった。
知らなかったでしょ。今の彼女のイメージとは違って、バリバリの英語の歌を何曲かリリースしていたので、私も1996~2000年頃に渡米していた時には何度もカーラジオで聴いたものだった。
 
その辺りを今さら引っ張り出して来るNight Tempoと言う黒船が、地味に地味に日本の臍を攻めて来る。アルバムに参加した殆どの女性が彼、Night Tempoに賛辞を送り、最早日本国内の作曲家陣は放置プレイと相成っているようだ。
 
同アルバムにはこのブログでも先日触れた中山美穂の『Ninna Nanna』も収録されている。私の推しはやはりミポリンだが、渡辺満里奈や渋谷系の元祖、野宮真貴も捨てがたい。
 

 

 
丁度さっきまで週末恒例の「世界の新譜チェック」をひっそり開催していたが、このところヨーロッパ勢が影を潜めている。おそらく例の注射の影響と、異常気象や天変地異の影響がそこに折り重なっているのだろう。
 
私は外出の際にはマスク派だが、なるべくマスクを着用しないで済むようなロケーションを選んで生活をエンジョイしている。
外出をして「マスクなんてしないぞ!」と叫んでいる人たちを見ているとただただ滑稽で、何を無駄なマッチポンプをやっているのかと侘しくなって来る。
人に文句を言っているそこのあなたも、文句を言っている相手と同じ穴の貉だと気付きなさい!と言いたくなる。
 
音楽は室内で楽しむ娯楽にシフトしつつある。室内で楽しむ音楽とは何か‥。その心地いいツボを、Night Tempoは熟知している。
だが、ここで負けてはいられない。
 
 
サブスク先人の日本人アーティストの坂本龍一(故)やDidier Merahの功績がこれ以上無駄にならぬよう、日本人アーティスト達にはもっと頑張って戦って欲しいと思うが、今のところは上に書いた二人のうち残る生存者が国内の音楽シーンを牽引して行くに違いない。
 
良い戦いを展開するには先ず、敵をよく知ることだ。これは全ての戦に通ずる。そして何より人智を超えた力を発揮する為の土壌を、自ら耕して構築することだ。
私がこのブログ上に多くの隣国を含む海外アーティストの秀作を臆することなく紹介している理由は、日本の今の腐敗した音楽シーンの水底の泥を一掃し、新しい知識と新しい戦術をもって国内の若いアーティスト達の小さな芽を守ること、それに尽きる。
 

私は世界中、古今東西の全ジャンルの音楽を熟知し、さらにそれらを年じゅう分析し続け、そして新譜情報や音楽理論のアップデートを毎日繰り返している。
おそらく無敵だ。
デビューや音楽の方向性に行き詰った若い音楽家たちの、良い道しるべを指し示せる世界唯一の音楽評論家であると言っても良いだろう。
 

先ずは上記に触れた意味合いも込めて、皆でNight Tempoの新作を徹底的に分析しようではないか。
 

[音楽評論] “Ninna Nanna” – Night Tempo & 中山美穂

2024年12月6日、中山美穂さんが亡くなられました。
あらためて、中山美穂さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 
2023年9月9日、少し遅ればせながらの今週末の新譜チェックを開始。
秀作が少ない中昨夜はクリス・ボッティのジャズの負のトラップにハマり、今日は中山美穂とNight Tempoのコラボ新作 “Ninna Nanna” にまたまた足を取られる格好に。
 
あっちこっちとぶつかりながら、世界の新譜チェックは粛々と進んで行く。障害が多い程燃えるのが私。ただでは起きない。
 

 

楽曲 “Ninna Nanna” 、イタリア語で「子守歌」の意味の言葉だが、彼女が歌う “Ninna Nanna” は何とEDMのTopにヴォーカルをくっつけたようなリズム・ミュージックだ。

作曲は又してもお隣韓国の Night Tempo の手によるもの。歌詞は中山美穂。
よく聴くとヴォーカルはオババ声で、途中何か所も声を震わす低音の「オババヴォイス」が炸裂する。
冒頭の「マンマ」はヴォーカルをわざと震え声に加工したようにも聴こえるが、その辺りも魅力的な「オババヴォイス」にリスナーを心地好く騙すテクニックとしてあえて捉えよう。
 

歌詞が又良い。
 

遠い遠い国のあるところに
Ninna Nannaを歌う 蝶々がいました

 
悲しみの先で 待ってくれる
パパパピヨン
揺れるマグノリア
 
マンマの夜空に走る列車
Uh 夢の彼方 胸の奥


“Ninna Nanna” 歌詞 より

 

流石小説家の元/ 妻だけあって、中山美穂の詞のセンスは今も冴えている。

こうやって仮に昔のアイドル歌手であったとしても、自分の言葉で表現することは貴重な体験だ。リスナーにとっても、表現者自身にとっても。
 
一方作曲者 “Night Tempo” は兎に角多才で憎ったらしいお隣韓国のDJ & プロデューサーで、勿論作曲もお手の物だ。
今世界をブイブイ言わせているK-Pop流王道コードで、クール女子の涙腺を甘々に徹底的に攻めて来る。この奇襲に遭ったらおそらく誰も逃げられない。
 
最近のオススメの一曲が此方、“Silhouette” (feat. 土岐麻子) だ。
 

 

勿論その他にもかなりアップテンポの “New Romantic (feat. Maki Nomiya)” みたいな作品も手掛けており、渋谷系に精通している音楽リスナーにとってはたまらない人選だ。
だが私の好みでは、こういうアップテンポの曲よりも若干速度を落としたDown Tempoな楽曲の方が、Night Tempoらしさがキラリと光るような気がする。
 
とは言ってみたものの、よくよく聴いてみると “New Romantic (feat. Maki Nomiya)” と中山美穂が歌う “Ninna Nanna” はほぼ同じ速度だった。
中山美穂の歌い方のせいなのか、若干楽曲がまったりと聴こえる辺りも美穂マジックなのだろう。
美穂の歌い方の特徴として、母音がよく響くので Maki Nomiya (野宮真貴) の子音だけをアタックで響かせて切って行く歌唱法と比較すると、中山美穂のレガート歌唱スタイルの方が韻が長く鼓膜に余韻として留まってくれるのではないか。
 
それにしても声帯のしわがれ感を躊躇なくマイクに乗せて歌い切った “Ninna Nanna” が、中山美穂の若かりし頃の歌声よりも断然印象が強く鼓膜の奥底に残り続ける辺りは、ある種の高齢歌手のしぶとさよ、強みよ‥。
私もほぼ同世代として声高らかに勝利の雄叫びを上げたい気分だ。
 

 

そして日本の昭和のシティー・ポップを徹底的に研究しまくり、そこに二次創作的エッセンスを足して盛って新作のシティー・ポップさながら世に送り込んで来る “Night Tempo”様には、流石の私も抗えない(笑)
 
だが今に見ていなさい。
日本からも最強の音楽家が既に世界の中心に到達していることを、あなたも知る時が来るのです。
その時まではそっと世界の中心の静かな部屋の中から、あなた方の進化を応援し続けようと思う。
 

嗚呼それにしても中山美穂がささやく「パパパピヨン 眠るマグノリア」‥の最後の「ア」の先に「ン~」が余韻に残るから、「マグノリアン」‥と甘えられているみたいに聴こえて仕方がない。
このまま回るピンクのベッドにもつれ込んでも、今夜ならばきっと何の後悔もないだろう。
 

蘇る岡田有希子 – Yukiko Okada – Summer Beach (Night Tempo Showa Groove Mix)

「岡田有希子」を検索すると、以下のようにWikipediaに書かれてある。

岡田 有希子(おかだ ゆきこ、1967年〈昭和42年〉8月22日 – 1986年〈昭和61年〉4月8日)は、日本のアイドル歌手である。本名は佐藤 佳代(さとう かよ)。
Wikipedia より


岡田有希子はたった19年の命を、駆け抜けるように生きてこの世を去った。

あの日のことを私は、今でも忘れることが出来ない。
丁度レコード会社へのデモテープの持ち込みを済ませて急いで母校の学生ホールに戻った、その直後に学生ホール中に彼女の訃報が駆け巡った。
さっきまでとても近くを歩いて、2~3社のレコード会社のディレクターたちと歓談し、大学の午後の授業に間に合うように京王線の急行と普通電車を乗り継いで階段を駆け上がって来たところだった。

記憶では前々日辺りに、彼女のニューシングル曲を某TV局の歌番組で視ていた時、妙な胸騒ぎがしたことを覚えている。
当時未だ私の弟も生きており(享年47才で逝去)、TVを視ていた彼が放った異様な一言を私は今でも忘れない。

確かに重いステップ、かなしげに目を伏せる表情は、それまでに彼女が一度も見せたことのないものだったから‥。
 


丁度この作品(くちびるNetwork)の作詞を担当した松田聖子は、数年前に愛娘を失ったばかり。
あの華やかさとは裏腹に、松田聖子の周辺には当時から陰鬱な空気や想像し得ない出来事や噂が、狂った花びらが宙を舞うように飛び交っていた。

美しい人の死は、概ね真実を遠ざける。
生前の彼女たちの華やかさだけが歴史に留まり続け、真相はいつも藪の中に置き去りにされたまま。それらはひっそりと、芸能界の片隅に積もって行く。

岡田有希子と言えばルックルや歌よりも、彼女の描く絵画の世界がさらに彼女を眩しく引き立てたものだった。
多才な彼女がこの世を去るにはきっと、それなりの理由と動機があったに違いない。その多くを知る人と言われる峰岸 徹(俳優)も、2008年にこの世を去った。

そんな中、韓国のDJ Night Tempo が岡田有希子の『Summer Beach』のリミックス版をリリースした。

日本人とはやや、生死観の異なるお隣の国のサウンドメーカーだから、これは出来ることなのだろう。何事もなかったように、普通の、ありふれたシティーポップの中の一曲を軽やかに拾い上げるようにして、少しビートの重いミックスが施されたSummer Beach (Night Tempo Showa Groove Mix)が再び、岡田有希子の精霊と共にこの地球の大地を踏んだ。
 

Summer Beach(原曲)
作詞・作曲:尾崎亜美 編曲:松任谷正隆


こうしてリミックス版が蘇ると、逆に岡田有希子のヴォーカルの上手さがよく分かる。
子音が強すぎないのに正確なリズムアタック、発音が美しく正確な日本語の発声の中から、彼女の持つ古風な性格がじんわりと滲み出て来る。
抑揚を最小限に抑え込んだ、かと言ってけっして不愛想ではなく地味で可憐なボーカルは完璧なまでに個性を脱ぎ捨てており、10代にして既に普遍的な歌手の域へと到達している。

さらに、如何にも「昭和のアイドル」を地で走り込んでいる最中の岡田有希子を、尾崎亜美のつかみどころのないメロディーと歌詞がオフホワイトのレースのように包み込んで行く。

丁度時同じくして、当時のサン・ミュージックの社長 相澤 正久 氏とは幸運にも私は二度お目通りが叶ったが、松田聖子の独立問題がそろそろ業界で噂になり始めた頃だっただけに、相澤氏の岡田有希子に対する熱の高まりを部外者の私でさえもつぶさに感じたものだった。
 

 
最近でこそアイドルの恋愛に対する注目度は、やや生温かいものに変化しているものの、未だ「アイドルの恋愛禁止条例」はそれが当たり前のこととして、多くのアイドルフリークの中では棘のように尖がったまま健在だ。
昭和のアイドルならばそれはなおさらのこと、「アイドルの恋愛禁止条例」は当時の若い表現者たちの人生のみならずメンタルまでもがんじがらめに縛り上げて行ったに違いない。

岡田有希子さんの死因の裏には、色々な噂や出来事が暗躍しているが、それはもはや時効を迎えたも同然だ。
今も未だ生き残っている関係者やその周辺の人たちでさえ真相を口ごもっているには、歴とした理由がある。‥これ以上はもう何も申し上げられない。
 

 
この記事の最後に「くちびるNetwork」のYouTube版を貼ろうかどうしようか迷ったのだが、如何せん楽曲が余り好くない。
なので岡田有希子 with Night Tempo のもう一曲のリミックス、ファースト・デイト (Night Tempo Showa Groove Mix)を貼っておきたい。

もう直ぐ彼女の命日がやって来る。
春風のその彼方から、彼女がもう一度生まれ変わって来る日を待ちながらこれから何度桜の花が咲き乱れ、散って行くのだろうか。

『ファースト・デイト』 作詞/ 作曲: 竹内まりや