天使の寝顔 – いってらっしゃい、マイケル‥

マイケル、旅立ちの日。ほとんど夜通し、マイケルを撫でながら過ごしました。
そして結局朝まで余り眠れずに起床して、軽く身支度をしながらマイケルに最後の抱擁を。
朝からじっとりと真昼のような暑さを感じながら、それでもどこか清々しい空が広がっていました。
 
幸先の良い時、神様は私達の頭上にそれを知らせてくれます。空一面に龍雲が広がっていました。
けっして幸せな儀式ではないとは言いつつ、これはきっとマイケルの為に用意された一日の始まりだと感じ、泣き腫らした瞼の痙攣を押さえながら支度を進めて行きます。
 
 
朝10時に動物霊園からの送迎の車が到着し、おくるみにマイケルを包み、そっと乗車。
マイケルの首がグラグラしているので、慎重に右の手のひらに包み込みます。さながら新生児を抱く時の要領に似ており、どこか懐かしい記憶を呼び覚まされる私でした。
 
マイケルは私達に降り掛かる全ての「圧」(呪い)を、おそらく完全に持って行ってくれたと思います。
あの小さな体で私の実母の霊魂から発せられる呪詛のようなエネルギーを、最後はマイケル自身が一身に背負い込んで、命懸けで私達夫婦と未来を守り抜いてくれました。
 

 
マイケルが逝く前夜、私達夫婦とマイケルの間で一つの約束を交わしました。
それはもう一度、次こそはもっと健康な体をともなって自由気ままに我が家に戻って来ることでした。
「どうする、マイケル?もう一度うちに戻ってやり直してみない?」
そうマイケルに尋ねてみると、スムーーともフムーーともつかない溜め息の後にマイケルが、微かに首を振った瞬間を私は見逃しませんでした。
 
マイケルが旅立ったのは、その翌日の午後でした。
きっと傷付いてボロボロになった肉体を脱ぎ捨てたとしても、もう彷徨うことなく戻れる家があるんだと、マイケルは安心したのではないでしょうか。
 
 
早朝にマイケルが、自分が逝く瞬間の感覚を私に送ってくれました。
それによると意識が段々と朦朧として来て、視界が赤くなり体中に発熱感を感じ、いきなり天地がひっくり返るような衝撃があり、そのまま転倒して何も視えなくなった‥、そんな感覚でした。
でもその中でマイケルがふと思ったことは、もう一度我が家に帰って来れると言う希望の灯で、それを思うと自然と唇に笑みが浮かんだようです。
 
きっと本人は突然に来た激痛にもがいただろうに、最期のマイケルは何とも言えない笑みを口元に浮かべて眠っていました。
それは今日、その瞬間まで私達が気付けなかった彼の無垢な真実の姿。
それを見た途端、私はこれでもかと言う程涙が止まらなくなり、暫くそのまま泣き続けました。
流石に葬儀を執り行う係の男性も、私があんまり泣くから困ってしまったでしょう。
 
 
余談ですが霊園に到着した時に私が来ていたTシャツとジーンズが、かなり広範囲に濡れていました。何だろうと思って匂いを嗅ぐと、それがマイケルの体液だと分かりました。
逝く前夜の約束の証しとして、彼は私にマーキングをして行ったのでしょう。いかにもマイケルらしいなと思い、又涙が溢れ出ました。
 
マイケルが逝く2時間前に撮影した写真も一緒に掲載しますが、彼は物凄い頭痛の痛みとそれまで経験したことのない発熱に身動きが取れなくなって、スイカの入った小皿を抱きしめながら、体力と気力の限界でそれを舐めては眠り、又舐めては眠り‥ を繰り返していました。
飼い主から見るとそれが余りに可愛く見えてしまい、思わず私はスマホにその瞬間を収めました。
 

 
霊場でマイケルを、ありったけの餌や草や果物と、彼が大好きであろう黄色い花で飾りました。
私がスマホを向けるといつも何かしらのカメラ目線をしてくれるマイケルですが、最期のマイケルはどう見ても微笑んでいるようにしか見えません。
 
まるでディズニーから飛び出して来たうさぎみたいにその寝顔が可愛いので、皆様の記憶の中にその瞬間を収めて頂ければ幸いです。
 

 
又獣医さんからも褒めて頂いた綺麗過ぎる奥歯が遺骨の中にそのまま残ってくれたので、そちらも貼っておきます。
 

 

いってらっしゃい、マイケル。
道中気を付けて遊んで、そして又帰って来てね🌈